2.別れの理由

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「わかった」 「え?」  二人して驚いた表情(かお)をした。 「なんだよ」 「わかったって? なにが?」  永田が高速で瞬きしながら聞いた。  永田はいい奴だ。  いい奴で、嘘がつけない奴だ。  だから、俺の『わかった』にビビッてる。  わかってほしくない『何か』があるから。  そして、和奏もまた、唇をもごもごさせて永田を見ている。 「今日、和奏の家に行く。それでいいんだろ?」  二人が俺を見る。  和奏は嬉しそうに、永田は信じられないといった表情で。  チャイムが鳴り、和奏が隣の教室に戻っていく。  その後姿を、永田がじっと見ていた。 「勉強になんかなるかよ」  バッグから次の授業の教科書を出しながら呟くと、永田が何秒後かに俺を見た。 「え?」 「いや、和奏さ。あれ、勉強なんかする気ないだろ」 「そんなのわかんな――」 「――ヤリてーだけだ。ま、いいけど。テスト前にヤッてスッキリするわ」 「そんな言い方――」 「――お前が言ったんだろ? 嫌なことはヤッて忘れろって」 「~~~っ!」  わざと、嫌な言い方をした。  永田は俺の言葉にムカついたようで、勢いよく身体の向きを変えて座り直し、机の脚を蹴飛ばした。  永田が和奏を好きだとは、知らなかった。  いや、好きになった、のかもしれない。  どっちでもいい。  ただ、和奏がどういうつもりで永田に近づいたのかが気になった。  放課後、和奏の家に行った。  コンビニで昼飯を買って行ったのだが、食べるより先に和奏が抱きついてきた。  最初からこんな感じだった。  一年の終わりに告られて、数日後に家に呼ばれた。  和奏がナニを期待しているのはわかっていたが、最初の数回は手を出さなかった。  女子の間で、何人とヤッたとか誰とヤッたとか、そんなマウントの取り合いをしているらしいと男子が話していて、くだらないと思ったから。  和奏には、特に親しい友達がいない。  少なくとも、俺は知らない。
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