7人が本棚に入れています
本棚に追加
電車のときと同じく、その少々可愛らしい瞳が僕を睨む。
ずいぶんなご挨拶だ。
「ねぇねぇ、愛加里、なんで恒河沙さんを知ってるの?」
「どうしてそんな嬉しそうなの? はぁ……、一度、電車で一緒になったのよ」
通路側で僕の前に座る田原さんが、パーテーション側で鬼泪山の前に座る愛加里さんを意地悪な瞳で覗き見上げた。
思わず溜息が出る。
「はぁ……、一度じゃないです。毎朝、同じ電車に乗ってますよ?」
え? という顔の愛加里さん。
「あああ、あたしは見たことないもん」
「そうでしょうね。あれだけスマホの画面に集中し切っていれば。なんかいつも一生懸命に読んでますよね」
「そ、そんなところまで見てるのっ? ちょっと気持ち悪いんだけど」
「人間観察ですよ。でも、観察しなくても毎日同じ電車に乗ってれば、そのくらいのことは嫌でも目に入ると思いますけど」
僕の言葉になにも言い返せずに、愛加里さんはぐぬぬという顔。
ちょうど運ばれて来た『ぬくもり』とミルクティーが、ふたりの前でふわりと湯気を立てる。
そのカップを手に取り、田原さんが僕を覗き見上げた。
最初のコメントを投稿しよう!