1-3  出会いは|『妖精館《アルフヘイム》』にて

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「でも、恒河沙さん? 今日は電車で愛加里を見なかったんじゃない?」 「え? そうですね。確かに今日は見かけませんでした。あ、昨日もか。別の電車だったんですか?」  クスクスと口に手を当てる田原さん。  愛加里さんがあわわとのけ反る。 「もうっ、どうしてそんな話するのっ? そのっ……、昨日は休みだったのよ。今日はっ……、えっと……、なんだっていいじゃないっ」 「愛加里? 正直に言いなさい? 寝過ごしたって」 「うううっ、うるさいのっ」  ぽかんと口を開いている鬼泪山。  普段なら前傾姿勢で話題を持っていこうとするコイツが、なぜか石像のようにぴくりとも動かない。  その顔を見て、さらに笑みを増した田原さんは実に楽しそう。 「でもね? 恒河沙さん。私にあなたの小説を教えてくれたのは愛加里なんですよ?」 「わっ、わっ、待って」  田原さんの言葉を聞いて、突然腰を上げた愛加里さん。  広げた両手がガタンと音を立てて、勢いよくナプキン立てをひっくり返す。  ナプキンが散らばりながらテーブルの上で舞った。 「わっ、わっ」 「ちょっと愛加里、なにしてるのよ」 「だって、その」
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