2-1  再会は小説よりも小説のようで

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【そんなんじゃねぇって言ってるだろ。いいから、、明日、プロットを持って来い】  面倒くさい奴だ。  そう思いながら、【分かった】と打った返信。  そうして溜息を伴って顔を上げると、ちょうど窓の外に駅のホームが流れ始めた。  列車が止まり、一瞬の静寂が辺りを包む。  僕が乗る駅からふたつ次の、川の下にある駅。  ここから地上へ這い出てちょっと歩けば、さっき鬼泪山が言った文学大賞の『竹邉書房』の本社がある。  僕が一番嫌いな出版社だ。  疎らな人影。  もう通勤ラッシュをずいぶん過ぎた時間、この疎らさがなんとも心地よい。  その心地よさを満喫しつつ手元のスマートフォンへ目を戻そうとした瞬間……。 「あ」 「え? ああっ」  開いたドアから現れ、突然に僕の心地よさを奪った、その姿。 「愛加里さん……」 「な……、なによ」  立ち止まったまま、ジトリと僕へ向けられたその瞳。  やや上品に色が抜けたブルージーンズに、ふわりと柔らかなクリーム色のニット。  チラリと見ると、今日はちゃんとスニーカーを履いていた。 「別になんでもありません」 「ふーんだ」  なんなんだ。
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