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一瞬のけ反った彼女だったが、ちょっと口を尖らせるとすぐにそれを一文字にして、斜め前の空いている座席に腰を下ろした。
思わず出た溜息。
僕は足を組み替えて、手元へと視線を戻す。
彼女も同様にスマートフォンを取り出した。
乾いたモーター音。
地下鉄は何事もなかったかのように滑り出す。
その後も、数人の客の乗降があった。
僕はどうでもいいニュース記事を流し読みしつつ、その乗降客の足が右へ左へと流れるのを視界の端に捉えていた。
別に気になっているわけじゃないが、やはり時折、彼女が視界の端をかすめる。
どうやらいつもと同じように、その瞳を真っ直ぐにスマートフォンへと向けて、なにか一心に文章を読んでいるようだ。
その顔は、実に真剣。
あのドジの塊の顔とは思えない、きりりとした表情。
そうして僕の思考が何度か手元の画面と彼女の横顔とを行ったり来たりしているうちに、例のごとく地下鉄は地上に悠々と顔を出した。
背景は無味な夜景。
窓の外を、いくつもの冷たい街路灯が走り去っている。
顔を上げて彼女を見ると、彼女はいよいよ集中していた。
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