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その後
ニナは、屋上で洗濯物を干していた。
少し青黒い染みの残った白いエプロンが風にはためいている。
男は大学を辞め、伯爵家を継いだと後になって知った。
男の兄は病弱で、いつか大学を辞めなければならなくなる事を知りながら絵を描いていたという。
伯爵家は大学に出資していた。だが男は学生たちから嫌われていた様で、その為に持ち物を洗濯室の近くのごみ箱に捨てられていたという事も先輩から後になって聞いた。
男は何も語らずにニナの前から姿を消した。
語らなかったのは自分も同じだが。
ニナは、そう思いながらエプロンの皺を叩いて伸ばす。
男は大学を辞めても部屋は借りたまま、中にあった物も残されたままだった。
男の部屋には群青色のあの本と、紙切れが残されていた。
好きに使え、と書いてあった。
私たちは、少しだけ似てたのかも知れない。
そう思った。
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