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ニナは、男の住むアパートに連れて来られた。拒めば仕事を失う。そう思うと逃げる事が出来なかった。
男は、ドアを開け、ニナを中に入れる。
ニナは入ってすぐの広い部屋の前に立ち、息を呑んだ。
部屋には画材が所狭しと置かれ、イーゼルが立てられ、カンバスが置かれていた。
作業用の机の上はに筆が立てられ、鉛筆が転がっている。
ニナは描きかけのカンバスを吸い込まれる様に見つめた。
男が、ニナを見る。
「何?」
ニナは、はっとなって男の方を見た。
「いえ……」
男はニナの横から部屋に入ると、カンバスを新しいものに変えながら言う。
「何してんの。早く脱いでよ」
「え?」
「服脱いで。裸になって。そこのソファにテキトーに寝そべって」
部屋の奥にベッドの様に横に長いソファがあった。
「な、なんで」
「俺の言う事聞くんでしょ? モデルになれよ」
ニナは、顔を歪めた。羞恥心で全身が熱くなる。
「で、出来ません」
「は?」
「人前で裸になんてなれません」
男は、考えるような間をおくと、部屋を出て行こうとする。
「分かった。あんたが泥棒したって、大学に言ってくる」
「え」
ニナは、迷った。クビになりたくない。でも裸になるのも嫌だ。
男は勝ち誇った様にニナの前で立ち止まる。
「洗濯婦なんて卑しい仕事でも、クビになりたくないんでしょ?」
ニナは咄嗟に言い返せなかった。だが腹が立って仕方がなかった。
「……お金、下さい」
「あ?」
「タダでは脱ぎません。お金下さい。貴重な本を捨てられる位お金持ちなんでしょ。お金下さい」
男が眉を寄せる。
「なにそれ図々しい。黙ってるのと引き換えに言う事きくんだろが」
「裸になるのは別です。お金くれなきゃ脱ぎません」
男は、鼻から息を吐くと懐から財布を取り出し、大型銀貨1枚を床に落とした。
ニナはそれを見て顔を歪める。家賃の三分の一の価値がある。嬉しいとも、少ないとも思った。
「早く脱げよ」
男が言った。
ニナは、黙って銀貨を拾うと、服を脱いだ。
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