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「翔真くん、行ってらっしゃい」
重度心室中隔欠損症の馬場翔真くんのオペが今から始まる。
ダブィンチによるロボット支援下手術ロボット手術だから手で行う胸腔鏡下手術よりも安全で正確に執刀できる。
大和くんが執刀したオペの動画をついつい見てしまう。
手先が器用な人だなとは思っていたけど、縫合結紮が丁寧で早くて上手すぎる。
胸腔鏡下手術でも完璧に行える心臓血管外科医はそういないと思う。
「俺、失敗しないので」
数年前に流行った医療系ドラマのセリフをふざけて言う大和くん。
オペに余裕がある。
妊娠23週前後の600g満たない赤ちゃんのオペを何度か執刀した経験があるらしい。
とはいえ、天才心臓血管外科医 有馬頼翔立ち合いの元。
大人の心臓が、こぶし大くらいなのに対して、新生児の心臓は、大きめのいちごサイズ。
心臓は4つの部屋に分かれていて、実際に手術を行うのは、多くの場合その1/4サイズで難易度は高すぎる。
しかも、心臓が大きくなる事を想定して手術を行わないといけないから判断が難しい。
「無事に成功したよ。心臓が大きくなるたびに再手術はまのがれないけど、3歳までは持つと思う。ご家族に術後の説明に行かないと」
執刀時間は1時間弱。
気になって私もオペ室の関係者待合室にいて、ダヴィンチが撮影した映像をモニターで見ていた。
「大和先生……凄いな。あの人に指導医になって貰いたい」
私の隣で見ていた進藤直人くん。
大和くんに尊敬の眼差しをむけていた。
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