休暇  与論島

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休暇  与論島

「私も手伝います」 与論島総合クリニック。 院長が気さくな方なのと大自然に癒されたいと初期研修できた医師がプライベートでボランティアにくる。 「助かるよ。今年の夏は暑いから熱中症患者が多くて大変だ」 熱中症患者にする医療行為。 体を冷やす事と点滴治療を行う。 エンテロウイルスとアデノウイルス完全による発熱も流行する。 8月初めに訪れたのにGW並の患者さんがいて、私も診察に回った。 「和泉くんに会いに来たのに2人きりになかなかさせてあげられなくてごめんな」 午後10時過ぎてやっと観光客の来院が落ち着いた。 初期研修で入ってる医師が和泉くん以外いないタイミングだったのもあり、多忙期に訪れて役に立てたから良かったと思う。 「咲良さん、今日は満月だから砂浜に散歩にいかない?」 ウミガメが5月上旬から7月下旬の夜に卵を産む。 その卵は60日前後でふ化し、夜、一斉に子ガメは海へ帰っていく。 5月初めから8週間の研修時、奇跡的に産卵には立ち会えた。 孵化して海に帰っていく子ガメ達の姿も見たいと思った。 「砂浜から……子ガメだ!!」 100匹以上いると思われる子ガメが海に向かって行進してる。 「咲良さんと見られて良かった」 月明かりに照らされた和泉くんの笑顔は最高に美しい。 私の手をぎゅっと握りしめ、私を見つめてくる。 研修の時、仕事に追われてなかなか恋人らしい雰囲気になれなかった。 ドキドキが止まらない。 「病院に戻ろうかな」 明日も島唯一の総合病院には患者さんが殺到するから早く戻って休んだ方がいい。 「そうだな。咲良さん、今日は一緒に夜を過ごしていい?」 「えっ!?」
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