他でもない貴方だから好かれなくても良い?

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他でもない貴方だから好かれなくても良い?

 「他でもない貴方だから…好かれなくても、良いんじゃない?」 その一言が、僕を救ってくれた。 まだ日中は少し暖かいような11月のある日の塾帰り。僕は、沈みそうな太陽を背に、鉛のような重たい足を引きずりながら帰る。 家につくと、親はもう晩御飯の準備をしていた。まだ5時くらいだってのによ。家ではセキセイインコを飼っている。名前は、「メープル」。黄色いはずの背中が、なんらかによって茶色くなっている。そこから、名前がメープルになった。 最近メープルは、悲しいことに病気ぎみ。家族もみんな、心配している。特に心配性の父は当たり前のことだ。「今日の晩御飯は何?」と聞くと、あんたの好きな餃子だよ、と言ってくれた。 トイレに行って、リビングに戻ってメープルに話しかけようとした。 「な、メープル。僕って存在感薄すぎて学校では空気なんだけど、僕みんなに好かれたいんだ。どうしたらいいとおも...えっ?」 眼の先には、羽全体が紫や茶、赤に染まったメープルが腹を抱えて苦しんでた。そのまま呆然とメープルを見つめていると、やがて息が途絶えた。目の輝きも、突然として消えた。 するとそこに1羽のツバメが飛んできて、窓に居座った。 「他でもない貴方だから...好かれなくてもいいんじゃない?」
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