1人が本棚に入れています
本棚に追加
「いってきまーす!」
玄関を抜けると猪さんがブヒっと鼻を鳴らす。僕は猪さんに乗って風を切る。十一月の風は心地よい。ひんやりとした風。このくらいの季節が僕は一番好きだ。
「翡翠ーー!」
途中、フーフーとスイスイを見つけて猪さんの背中に乗せる。僕らは朝は大体女体化している。女体化していると猪さんのスピードが速い気がするからだ。瑠璃お兄ちゃんに言わせると猪さんもにょたチョコ男子が好きらしい。へんたいさんだ。でも猪さんだからいいんだ。目つき悪いけど可愛いもん。
「あら今日も可愛いなぁ」
僕らが学校につくと瑞希先生が校庭にいた。
「珍しいですね。瑞希先生、いつも遅刻ギリギリなのに」
「いやぁ最近寒いからお布団気持ち良くて早寝してるんだ。その分早起きなだけさ!」
瑞希先生はピシッと親指を立てて見せる。まぁ瑞希先生が近くにいると安心だからいいか。
「翡翠きゅーーん! 風きゅーーん! 水きゅーーん!」
と思っていたら予想通りに面倒臭い理事長が来た。毎朝毎朝、すぐに僕らに抱き着こうとするんだ。
僕らはいそいそと猪さんから降りる。そのあと、瑞希先生がピシッと理事長に人差し指を向ける。
「いけ! 猪さん!」
「ブヒぃぃぃぃ!」
いつも通りに猪さんが理事長を吹っ飛ばした。何回吹っ飛ばしても怪我一つしない理事長を見ていると人間って丈夫なんだなぁって思ったりもする。
「さて、授業はじまるよ。行こうか」
瑞希先生が校舎に向かう。僕らもその背中を追った。
最初のコメントを投稿しよう!