*アブラムシとテントウムシ*

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*アブラムシとテントウムシ*

 ガザニアは、お日様を求めて上向きに開きますので、少しヒマワリに似ています。お子様が描く太陽のように尖った花弁で、真っ黄色です。 そんな、黄色が大好きなアブラムシのお客様が、遠足の様にわんさかと訪れたのは、夏頃でした。 「あの……先日は二名様だったと思いますが……?」 私は水やりもそっちのけに、朝からガザニアに押しかけるお客様に驚きました。 「ええ。あまりに蜜が美味しいので、つい、皆を呼んでしまいました」 「はあ……皆……。皆とは、その……まだ、おいでなのですか……?」 あまり集合されても、今度は蕾が開きにくくなり、花が開かずの扉になってしまうのではないかと、私はそわそわしたのです。 「ええ。みーんな、呼びましたよ。みーんな、ね」 何が来ると言うのでしょう。その表現だとまるで、アブラムシだけではなさそうな気にもさせられます。 「あの……そちらのガザニアの部屋は天然ものでして、あまり数多いものではございませんのと、一つひとつが小さいです。もし賑わうのであれば、お隣のミニトマトの棟はいかがでしょう?」 「確かに黄色い花だけど、違うのよ。あれは、また違う仲間が立ち寄るわ」 そう言ってお客様は、ガザニアに群がって蜜の虜になっていきました。  しかし少々困ったお客様です。私の様な人間は、こんな時、どの様にして理解頂けるかを調べにかかりますが、どの方法も半ば強引で嫌気がさします。 そうして困り果てながら、他のお部屋のための水やりを終えました。
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