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翌朝。
水やりの仕事に出たところ、蕾だったガザニアが綺麗に開花していました。私は小首を傾げるばかりです。
なにせ、アブラムシ御一行様による封鎖が起きていたのですから。
うんと前のめりになってみると、昨日ご到着されたテントウムシ様が、ガザニアのそこら中を、いそいそと這いずり回っておられました。
「あの……随分とお忙しいご様子ですが、何かご不満でも……?」
私は、リラックスされるどころか忙しなく過ごされるお客様が気になりました。
「とんでもない! 贅沢三昧ですよ! あっと言う間に平らげてしまいました」
「平らげた……? はあ……一体、何を……?」
「アブラムシですよ、アブラムシ!」
私はそこらを見回し、目を疑いました。密集され、どんちゃん騒ぎしていた皆様が、どこにもおられません。
そしてまた、もう一匹のテントウムシのお客様が、メランポジウムのお部屋に到着されておりました。
「家族も呼んだんですよ!」
「……さようでございますか」
お客様が、お客様を食べてしまった。
私は暫し動揺しましたが、これも、世界の約束事。それ以上は、何も言いませんでした。それからアブラムシの皆様はすっかり訪問されなくなり、テントウムシのお客様は、卵だけを宿に残してチェックアウトされました。
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