*アブラムシとテントウムシ*

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 お子様を置き去りにするのもまた、虫の世の流れなのでしょう。私は、水やりの仕事の傍ら、お子様の成長の様子を見守る仕事が増えました。 そして午後、キッチンに立って、お茶の準備をしていると、驚きのあまり声が出ました。 「どうもどうもー! おじゃましてます、こんにちはー! どうもどうもー!」 ササササササと這い回るのは、活きの良すぎるテントウムシです。 「いけません、お客様。こちらは立ち入り禁止の部屋でございます。一体どこから?」 「そとですよー!」 それはそうでしょう。 とにかく出ていってもらわないと、誤って踏みつぶしてはいけません。と、私は忙しないお客様を早急に外へお運びしたのでした。 それからでも駆け回り続け、やがて、ベランダの柵に攀じ登ると翅を広げ、チェックアウトされました。 随分とあっさりしておいででしたが、その後、ガザニアの葉の裏をふと見てみると、卵の殻だけが残されておりました。 *Fin.*
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