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『皆、観てはダメ!すぐに画面を消して!』
私は荒れ狂うようにキーボードを叩く。
パソコンの画面に映し出された、廃墟となった寺で肝試しの配信映像。
薄暗い画面に、少し怯えた若い男性が3人映し出されている。
だめだ、この現場は本当に危険な場所だ。
小さな悪霊が、どんどん集まってきているのが映像で確認できる。
配信者と映像を観る皆の恐怖心が、その場の悪霊たちのエネルギーとなっている。
『配信をやめて!あなた達、そこから逃げて!』
必死にコメント欄に書き込むが、誰も私を相手にせず完全スルー。
どんどん視聴者数が増えていく。
ほら、映っているのは3人だったはずなのに、もうひとつの影が見える。
異変に気がついた視聴者が、コメント欄に『ねぇ、あれ何?』と声を上げる。
『そこ、なんか変じゃね?』
『誰かいる?』
『手、映った!誰の手?』
『手?あった?』
『暗くてわからない』
『霊だったりして?』
『寺なんだから霊の一つやふたつ』
配信者たちにも異変が起きてきた。
頭痛を訴える者、嘔吐する者、うずくまる者……。
『あれ。これって、本当にヤバいヤツ?』
『リアル配信でしょ?大丈夫?』
『ガチでヤバい?』
画面がブレ始め、撮影者にも異変が起き始めたようだ。
『と言いながら、ネタだろ』
『嘘にしては、しょぼくない?本当にヤバいのでは?』
コメント欄には恐怖をあおる声が続出し始めた。
ダメだ、私の声は皆に届かない……。
とうとうカメラは地面に落下し、その目の前に泡を吹いたまま倒れている配信者たちが映し出された。
そして……
初めは黒くて小さかった悪霊が集まって大きくなり、とうとうはっきり見える人の形になっていた。
黒い悪霊は配信者のポケットから携帯電話を抜き取った。
しばらくして、コメント欄に1行のメッセージが現れた。
『 そ だ て て く れ て あ り が と う 』
悪霊が画面をのぞき込み、ニヤリと笑った。
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