スターダム

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アリスが一般家庭出身というだけで断られてしまったからだ。そもそもルミエール座には名だたるかの有名な役者の息子や関係者、その血筋を持った人でなければ入団の許可は降りないというものだった。あまりのショックでひどく落ち込んだアリスは絶望してその後、何に対しても無関心になってしまい友達と遊ぶことさえ出来なくなった。優れた人選をしなければ劇団は衰退の一歩を辿ってしまう。賢明な判断であるからこそ、アリスには自分の無力さが浮き彫りになってしまった。家柄だけでその人は無能とレッテルを貼られてしまうのは当然誰が考えてもおかしいと思う。アリスは現実と理想のギャップに押し潰されかけていたその時、女神がアリスに舞い降りた。 「アリス、あなたは何も悪くありません。この逆境に打ち勝つ覚悟はありますか?もしあるのならあなたはもっと自分を信じるべきです。」 「もう…私には頑張る気力さえありません。あれを見たでしょう。現実は無慈悲で理不尽ものです。心ゆくままに生きても何もいいことなんてない。自分が傷つくだけだ。」 「そんなこと絶対にありません。よく考えてみてください。あなたには世界を覆すチャンスが到来しているということに気がつかないのですか?もしもあの劇団以上にあなたがその能力を開花させたのならば、結局どうでも良いことになりませんか?」 「確かにそうなってもらいたいけど、私にはそんな自信ない。今までも散々否定される人生だった。だからこそもうこれ以上無駄なことなんてしたくない。怖いんだ。」 「なら仕方ありませんね。あなたがどれほど輝かしい存在であるかわからせる必要がありますね。」 「わからせる?どうやって?」 「これから行われる舞踏会に参加するのですよ。あなたの実力を磨くのにはうってつけの機会だと思いませんか?あなたの健闘を祈っているわ。」 すると声は途切れ元の自分の部屋で寝ていた。 一体何だったのだろう…。舞踏会?それとこれと劇に何の関係があるのだろうか? アリスの心の中は考えるほど錯乱状態になった。 それから数日後、家にある一通の手紙がアリス宛に届いた。 誰からだろう?裏面を見てみるとウィリアムと書いてあった。よくよく考えてみてもこの人が何者であるか思い当たる節がなかった。 仕事から帰ってきた両親に聞くも知らないと言っていた。それじゃ、私の近辺に関係がある人だろうか? 手紙の中身を見てみるとどうやら招待状であることが文面から見てとれる。女神が言っていたことってもしかしてこれのことかな? 日も暮れて欠伸をしていると、窓の外から小さな黒猫が私をじっーと見つめていた。 何か言いたげな雰囲気を醸し出すその黒猫は、家に入れてもらいたくて窓ガラスをペロペロと舐めていた。このままだと可哀想だと思い、仕方なく部屋に入れてあげた。するとアリスに擦り寄り甘え出した。 「どうしたの?甘えん坊だなー。」 アリスは黒猫の頭を撫でると、煙が一瞬口に入って咽せっていると、一人の人間がそこに座っていた。 「ここどこ?君、誰?」 「それはこっちの台詞だわ!」 唐突な返答に思わずアリスはツッコミを入れてしまった。
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