09.

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09.

「ねえ、ちょっと待ってよ」  帰り道を行く陸斗の背後から櫂の声が響いた。陸斗は思わず足を止めようとするけれど、それでも足を前に出す。 「待ってって言ってるだろう」  今までに聞いたことのないような櫂の怒りの混じった声だった。陸斗は思わず足を止める。けど、櫂になにを言えばいいのかわからない。今までの櫂に対する自分の態度が間違っていたのはよくわかっている。だからこそ、今さら櫂に合わせる顔もない。 「最後にこれを君に渡そうと思って」  櫂が陸斗に差し出したのは紙の束。一番上の紙に大きく印刷されているのは半月の写真。製本用のテープで何枚も綴じられた紙。 「これは?」 「いいから、中身を見てみてよ」  陸斗は半月が印刷された表紙をめくる。 「これって……」  そこには帰り道で鉄道高架の橋脚で笑う陸斗の姿を写した画像が印刷してあった。さらには図書館のロビーでスポーツドリンクを飲む同級生たちの姿。ページをむくって出てくる画像には、もちろん陸斗がいる。放課後や休日に櫂と陸斗が一緒に過ごした写真。 「コンビニで印刷したんだけど、なかなかうまくいかなくて。本当はもっと立派な写真集を作ろうと思ったけど、お小遣いもないから。写真の画像をパソコンで編集して、データをコンビニで印刷して、それをホチキスで留めて、せめて製本テープで写真集ぽく……」
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