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06.
「ねえ、冬になったら今度は冬の大三角形を見ようよ」
「冬の大三角形? 冬にも大三角形があるの?」
「うん。ベテルギウス、シリウス、プロキオンで冬の大三角形」
「そうなんだ。そういうのは初めて知ったよ」
「ベテルギウスまでの距離は640光年ちょっとだけど、プロキオンまでの距離は11光年と少し、シリウスまでの距離は8光年ちょっと。夏の大三角形に比べると、だいぶ近く感じる」
「8年前って言ったら、おれたちはまだ小学校に入ったばかりか」
「8年後って言ったら、僕たちは大学生かな」
8年。それは中学二年生の二人にとってはずいぶんと遠くに感じる。けど、絶対に届かない距離ではない。
「8年後かあ。そのときは大学や専門学校でで写真の勉強して、そしてたくさんアルバイトもやって、もっと立派なカメラを買えていると良いけど……」
陸斗には櫂の言葉がやけに弱気に聞こえた。
「櫂なら大丈夫だって。それにしても櫂はずいぶん星に詳しいな」
「星を眺めていると、すごく不思議な気分がするんだよ。何百年、何千年。下手すると何万年もの前の光を地球から目にしていることがね。奇跡みたいなものだよ。だから、その奇跡を写真にって」
そのとき、自分が興奮気味の口調だと気づいた櫂。ふたたび少し照れくさそうな表情に変わる。
「スマホじゃうまく撮れないけど……」
「そうだな」
そうして二人は笑い合う。夏の大三角形の真下で。
「大人になったら天体写真家になりたいと思ってる。カメラマンになりたいけど、その中でも特に天体写真家にって」
ひとしきり笑ったあと、櫂はそう言った。ひどく真剣な表情で。
「なれるよ。櫂なら絶対に」
陸斗の言葉に偽りはなかった。そんな陸斗に櫂は苦笑する。いまひとつ自分に自信を持てないような感じの表情。
「でも、星空の写真なんて古い天体望遠鏡にスマホをくっつけて写真を撮ったことしかないから。それに写真の勉強も天体の勉強も必要だし。本当に僕がなれるのかな」
「大丈夫だって。おれよりもずっと櫂の方が成績がいいし」
「……。けっきょく勉強するしかないからね」
「来年は受験かあ」
陸斗は深いため息をつくばかり。
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