07.

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07.

 櫂が陸斗にもうすぐ引っ越すと告げてから、時間はまたたく間に過ぎていった。冬休みが近づく日々、クラスの同級生たちはクリスマス、年末年始、塾の冬季講習といった話題で盛りがるばかり。定期テストはとっくに終わっていた。誰もが浮き足立っていた。  相変わらず、陸斗は櫂と口を聞いていない。櫂が声をかけてくることがないわけじゃなかった。けど、そんなとき陸斗は不貞腐れた顔で席を離れたり、同じクラスの他の友達の会話に加わった。  塾の帰り道、あの公園で望遠鏡を覗いている櫂の姿を一度見かけたことがある。十二月も深まった冷たい風の吹く夜に、まるで陸斗がそこを通りかかるのを期待しているみたいに。相変わらず、足の短い三脚の上に載せた望遠鏡をのぞく姿はしゃくとり虫みたいだ。  けど、陸斗はそんな櫂の姿にぜんぜん気づかなかったというふうに、急ぎ足で公園のそばを通り過ぎるばかりだった。  その一方で、陸斗の心は焦るばかりだった。櫂が遠くの街へ行ってしまう。メッセージアプリでやり取りはできるけど、やがてそれも途絶えるだろう。大人になるにつれ、二人が中学のときに親友だったという記憶さえも薄れていくかもしれない。  だからこそ、陸斗は終業式までのあいだに櫂となにか特別な思い出を作りたかった。あの公園だとか学校の通学路ばかりじゃない場所、たとえばこの街でいちばん大きな駅にある観覧車に乗りに行って、その駅の隣にあるショッピングモールで遊ぶような。  そのときはこのクラスにいる二人の共通の友達も誘えば、楽しくにぎやかく思い出が作れるだろう。そうすれば櫂だっていつもの公園や通学路でスマホを使って撮るようなありふれた写真ばかりじゃなく、特別な思い出の写真だっていっぱい撮れるはず。  けど、それも叶わないまま、終業式を迎えた。
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