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垂れ耳のウサギたち
〈 結 〉
日暮れが一段と早くなってきた。結は大きな窓から外を眺めながら思う。ほんの少し前までこの窓から覗いた世界はまだハロウィンのかぼちゃが覆い尽くしていた。向かいのケーキ屋、フレイズの入口も、そのお隣の雑貨屋の窓枠にもオレンジ色のかぼちゃの飾りがにやにやしながら溢れていた。
それがもはや跡形もなく消え去って、クリスマスっぽい飾りに徐々に変えられようとしている。金銀のモールや星の飾り。子犬ぐらいの大きさがあるサンタクロースの人形。
そしてそれらは早くも今日の薄闇に包まれようとしていた。もう少しするとこの窓ガラスからは外が見えなくなり、代わりに店内がくっきり映し出される。啓介と、今は香乃がいる店内。
喫茶ひなたの中は暖かい。カプチーノを一口飲むと、更にお腹の芯から温もりが広がってくる。
「うわ、なにこれ、可愛い。」
今しがた結が運んできた紙袋の中を探りながら、香乃が大きな声をあげた。ブルーや銀色の球体の飾りやリボンの下から白い塊を幾つか取り出してカウンターに載せているところだ。
形を整え、耳をぴんとさせようとするが、上手くいかないのを見て結はくすくす笑った。
「その子たち、垂れ耳なのよ。」
手のひらサイズのウサギのぬいぐるみだ。サンタの赤いチョッキと帽子をつけたのが二十個ぐらいある。
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