好きが育てる

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 ああ、またこんなところに脱ぎ散らかして!  息子のショウは、すごくやんちゃ。靴下はいつもソファーの上だったり、テーブルの下だったり。  ひどいときなんかは、私の顔にまで投げ飛ばすこともあるくらい。  ……まったく、足の臭さは誰に似たのかしら。 「ママー、ぼくのくつしたどこー?」 「知らないわよ。ママもさがしてるの! あんたがあちこちにやるから」 「ええー、こまるよー。くつしたがないと……」 「どうしたのよ、いつもは靴下なんて、暑苦しいから嫌って言ってるじゃない」  すると、ショウの姉、リヨがひょこっとキッチンに顔を出す。 「友達がね、靴下きちんとはいてる子が好きなんだって」 「まあ、ショウったら、いつの間にそんな子ができたの? ママ聞いてないわよ」 「ねえちゃんいうなよー」  両腕を上げて姉に抗議するショウ。リヨはごめんごめんと手をひらひらする。 「でもそうなのね。それじゃ、ちゃんと靴下履いて、その辺に脱ぎ散らかさないようにしないとね」 「うん、ぼくこんどから、ちゃんとかたづけるよ!」  それからショウはちゃんとお片付けができるようになった。  好きって気持ちは片付けの気持ちまで育ててくれるのね。  ……残念ながら恋心の方は途中で枯らされてしまったようだけど。
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