2人が本棚に入れています
本棚に追加
五十嵐の厚みがある手が。自分の濡れた手を握っていた。
「そんでっ。
ずうっと。
くっついて温っため合って。
コーヒー飲みながら何でも話せるよおな。
そんな相手に出会いたいて思うとって。
今日、あんたに一目惚れした。
オレと付き合うてくれへんか?」
銀縁眼鏡のフレームからはみ出そうなくらい。
孝一の目は大きく開かれ、固まる。
「あかんか?
1ミリも可能性有らへんか?」
今日集まっていた高山さんのお知り合いは。
年齢層は高く。知識層的な雰囲気の人ばかりで。
その中で五十嵐は、多分一番若くてスポーツマン風で。
こーゆータイプの人も法律を仕事にするんやなあ、と。
思っただけで。
特別な感情なんて全然無くて。
いきなりの。この展開に、孝一は着いて行けない。
ただひとつ思うのは。
どんなに完成した人生を送っているように見えても。
その時間の中に、自分の内側に。
考え積み上げて来たコトは、本当にさまざまだと言うコト。
「あの。オレ」
「うん」
「中身も無うて、鎧も無うて。
ヒビ入った空っぽの器みたいで。
高山さんの元で少しずつ、中身を詰めとおトコで。
しかも。
人を好きになっとったんも気ぃつかん内に。失恋したり。
そんな、今。
誰かと付き合うたりとか、全然余裕無いです…」
「いやいや!
そんなら丁度エエやん。
最初のコメントを投稿しよう!