淹れ方次第

10/10
前へ
/10ページ
次へ
付き合うとかデートとか言わんでも。 ただ美味しいコーヒー飲んだり。法学の話しよおや。 人生は現在進行形やねん。良えも悪いも解らん。 いつも『生き方次第や』て思うてやって行くだけや。 せやから。一緒に、中身詰めるン試してみんか?」 いつの間にか。 痛いくらい手を強く握られ。 顔が間近に迫っていて。 五十嵐の眼力の強さに、孝一の思考は真っ白になる。 「とりあえずっ。 茶飲みトモダチからお願いしまっす!」 「は、はい」 ほとんど勢いに押された反射的な返事だったけれど。 焙煎を失敗した豆だって。 お湯の温度を上げたり。 フィルターを二重にしたり。 一晩冷蔵庫で寝かせたり。 淹れ方を考えて工夫すれば。 思い掛けない味わいにすることが出来るのだから。 誰かと一緒なら、工夫だって2倍。 予想もしていなかった人生になるかも知れない。 孝一の心臓が鈴のように小さく震えて。熱くなった。
/10ページ

最初のコメントを投稿しよう!

2人が本棚に入れています
本棚に追加