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ただ、この体力のお陰で。
心身共に負担の大きい仕事もやって行けている。
(とりあえず来たけど。
今日は、小難しい話は頭に入らんやろな。
挨拶だけして早よ帰ろ)
そしてふと頭を上げて。周りを見渡す。
焙煎機の音や匂いを考慮して選んだと言う、この場所は。
のどかで緑が多く。
水田の稲穂を揺らす風が気持ち良い。
(今の案件が終わったら。
あいつとのんびり旅行しよ思とったけど)
きっともう二度と連絡は無いだろう。
飲み屋で知り合った、遊び慣れた感じのコで。
よく笑って喋った。
毎日朝から晩まで、眉間にシワ寄せて仕事していると。
そのコの軽さに救われて、気楽で。
結構上手く行くんじゃないかと期待してたのに。
今回も長続きしなかった。
(もし。
ゆっくり一緒に過ごせるよおなコぉと。
出会えたら…絶対大事にすンやけどなあ)
そこまで思って。
ガックリ頭を垂れる。
そんな簡単に。そんな望み通りの相手と。
出会えるワケが無いのは、経験上よーく判っているのだ。
外門は開放されていたので、そのまま玄関まで入る。
「お邪魔しますー五十嵐ですうー遅おなりましたあ」
いつもの調子でリビングへ向かおうとして。
動作も思考も、びたっと一時停止する。
もしかすると心臓も止まったかも知れない。
「どおぞ。お待ちしてました」
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