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今時珍しいもンちゃうけど。
あーゆーお堅い組織やとマジ居心地悪うてなあ。
でも。仕事は遣り甲斐あったし。
自分の性癖はガキん時から、受け止めとったから。
この鍛えた身体とメンタルで。
テキトーに流して。上手くやっとってん。
せやけど。
部下を持つ立場になってなあ、気ぃついて。
オレと同ンなじよーに。
自分の核ンとこ隠して、周りに合わせとお奴が居ったら。
オレはそいつにまで我慢させとるんやなあって」
いつの間にか、洗い物の手は止まって。
流れる水に手を濡らしたまま、孝一はじっと聞いている。
五十嵐は、にっと笑うと水を止めた。
「自分がされとったコトを。
自分がしたあナイなあ、て気付いたら。
もう転職しとったワ。
ほんまは留まってでも。
そんな部下を守るべきなんやろけど。
それは怖あて。出来んかった。
今日も、検察庁のモンが居る言うだけで緊張したし。
弁護士の仕事も、昔の関係者に会いたないから。
刑事事件は受けんと、企業相手ばっかや。
な。見た目こんなでも。
結構ビビリやねん。
これまでやって来れたんは。
自分を護る分厚い鎧纏ったからで。
ソレ脱だらなあ、めっちゃ身軽ンなったで。
ヒトリでひょいひょい嫌なコトすり抜けて、生きて。
せやけど。
そのぶん、寒いつーか寂しいつーか」
ふ、と孝一が視線を落とすと。
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