ねこみちの踏み出し

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ねこみちの踏み出し

波はある。翻弄される。 ざぶんざぶんと寄せては返して 息継ぎをしようとした時に限って大波を被る。 このまま溺れて死ねたら寧ろ楽なんだろうか、なんて思ったりするけれど でも、怖くて動けない。 唯々布団に転がり、云うことをきかない脳みそと泥のような身体と心を持て余す。 ひたすら自分に苛立ちながら。 時に嘆きながら。 そんなこんなで全く外に出れない日々が続いた頃 運命、ということばに絡んだ闘病記の一頁を読む。 唇を噛みしめた。 血が出るほど。 久しぶりに。 ダメだ、こんなんじゃ。 せめて外に出よう。 一日一回だけ、ちょっとだけでも。 奇しくも夏至だった。 今、一番太陽がチカラを放つ今日に浴びないと きっとなんか後悔する気がする。 無理やり、外に出た。 フラフラしながら歩くけど やってやったぜ、とも思う。 やってやろーじゃねーか、とも、思った。 惰性でもいい、表出することで自分の背中を押そう。 あの、最初みたいに。 そうして始まったのが 今日は外に出たぞ報告の 「ねこみち よりみち まよいみち」だった。 あたしの運命とやらをまた転がしてくれたのも 彼だった。 少なくとも あたしに、とっては。
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