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4.0.0 昏天
土砂降りの雨が降り注ぎ、視界もままならぬ十一月の夜、鋭い痛みが前触れもなく俺を貫いた。
「あなたに花束を、そして甘美な死を」
アスファルトを叩きつける音ばかりが耳に飛び込んでくる中、どこからかそんなセリフも聞こえた気がした。
直後に襲い来る二度目、三度目の刺痛。
俺はケモノを追っていたはずなのに、どうしてこんなことになったのだろうか。
体温が失われていく中で、相棒のことを思い出していた。
強く降っているはずの雨の、その色も重さも、そして音も最早感じられない。
「スヴァン!」
女性の声が俺に呼びかける。
「しっかりして! スヴァン!」
それは俺の体を揺すり声を掛ける。
ケモノに夢中になりすぎて、いつの間にか相棒とすっかりはぐれていたのだ。
「グロリア……、泣くんじゃあない。かたき討ちは……任せた」
どうにか声を振り絞ったそのとき、焚き火のように暖かな感触がずるりと俺の中に入り込んでくる。
これが神に召されるということなのかと、多幸感に身を委ね、けれど、地の底から湧き上がるような暗い感情もまた、俺の体に纏わりついた。
どうか、どうか、俺を殺した奴が、惨めな死を迎えますように――
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