4.0.1 舞台の袖

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 僕の名前は須田半兵衛。その前は知らない。  僕の魂に刻まれている最初の名前。  僕が思い出せる最初の名前。  その名前は、しかし、脇役だった。  傭兵スヴァンという例外を除き、シュテファンの、コンラートの、セルハンの、彼らの意識の、あくまでも脇役だった。  僕の意識、僕の記憶が彼らの記憶と混ざり合い、そして僕は……、そう、まるで舞台の袖から彼らをじっと眺めているような、そんな脇役だった。  今は、違う。  魂の置き場所が異なる。  僕が舞台の中心にいる。  僕がスヴァンテ・スヴァンベリを脇役にしている。  僕の記憶に、僕とシュテファンとスヴァンとコンラートとセルハンの、混ざり合っているようでいてどこか分離しているその記憶に、大切な思い出に、スヴァンテ・スヴァンベリの記憶が融合しようと、バケツをひっくり返した雨のように打ち付け、入り込んでくる。  頭が痛い。
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