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1話 待ちわびた電話
夜ご飯もお風呂もすませて、万全の体制でソファーに座る。
リビングテーブルにスマホをおいて、ソワソワしながら待っていると、ついにスマホから呼び出し音が鳴った。
画面に表示された「将」の文字は、待ちわびていた相手。
はやる気持ちでスマホをつかむと、ツーコールが鳴る前に通話ボタンを押した。
「もしもしっ!」
勢いこんだせいで、大きい声が出た。
電話の向こうで将が笑っている。
「五十鈴、出るの早すぎ」
「だって、将が電話するっていうから、待ってたんだよ!」
将と電話で話すのは、二週間ぶりなんだ。
遠距離恋愛でなかなか会えないから、声を聞くだけで浮かれちゃうんだよね。今だって、気づいたらソファーから立ち上がってたし。
将がここにいたら、落ちつけって肩をたたかれるところだ。
そっと座り直して、スマホを耳にぴたりとあてる。
「将と話すの、久しぶりだね!」
「そうだな。五十鈴の声きくと、ホッとする」
「僕も一緒だよ」
安心もするけど、どっちかって言うと、嬉しくてたまらないんだ。将と話してると、頬がゆるんじゃう。
将とは大学のときから付き合ってて、もう六年になるけど、今でも大好きな自慢の彼氏。
ソファーに腰かけたまま、壁に飾ってあるコルクボードを眺めた。
そこには、将と付き合い始めてから撮った写真が何枚も飾ってある。たまにしか会えないから、メールを送るときも、電話で話すときも、写真を眺めるのが癖になってしまった。
最初の夏に撮った写真は、デート中の自撮り写真だ。将が僕の肩をつかんで笑ってるけど、僕は戸惑った顔をしてる。彼氏と写真撮るのが初めてだったんだ。
二人並ぶと、将は僕より十センチほど背が高い。たしか、一七七センチあるって言ってたっけ。
将は背も高いのに、顔もカッコいい。童顔の僕と違って、キリッとした意志の強い瞳と、鼻筋の通った顔はかなりのイケメンだ。
この写真は大学のときだから、将は茶髪に染めている。隣の僕は、生まれつきのミルクティーみたいな髪色で、毛先も細いから女の子っぽく見える。
だから、男らしくてカッコいい将は、僕の憧れだった。
「五十鈴?」
「ん? あ、なに?」
「また考えごとしてただろ?」
「う……ちょっとだけ」
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