運命の一冊

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運命の一冊

 私はそれをきっかけに本に、小説に、物語に興味を持ち始めた。映画を見て感動したり、考えさせられたりはする。いい音楽を聴けば鳥肌も立ち、踊りたくなる。  いい本というのはどういうものなのだろうか。  高校生になった私は夢枕獏やスティーブン・キングに出会う。魑魅魍魎が跋扈する世界観に心奪われ、非日常の扉を開けてしまった人の顛末に驚き、田中芳樹の描く英雄たちの死に涙をする。  ああ、なるほど、本というのは、小説というのはいいものだ。  その本はタイトルも作者もあらすじもわからない。その時代の作品なのか、古典なのかもわからない。  でもその一冊は僕を、物語を紡ぐ世界に引きずり込んだ。  あのお姉さんはどうしているだろうか。  もしも、私の作品が多くの人に読まれるようになったのなら、それを手にしてくれることもあるかもしれない。  だから僕は書き続ける。  そして伝えたい。  お姉さんの涙は、私の物語となりました。  あの本のこと、覚えていますか?  もし、覚えていたのなら、その本を読んでみたいものです。  それは私にとって、運命の一冊なのですから。  おわり
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