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出発
七人もいれば一人くらいはませた中学生1年生がいるように、一人以上は子供のままの「うっちー」や「まるちゃん」みたいな奴もいる。二人はよくはしゃぎ、よく拗ねて、よく笑い、そして時々我がままを通そうとする。
「トイレに行きたい。だれか一緒に行こうよ。」
一人では不安という顔はしなくとも、私にはそれがわかる。二つ下の弟と七つ下の妹は、知らない場所のトイレは一人で行きたがらない。
実際、当時のトイレの中というのはお世辞にも子供にとって生きやすい場所ではなかったように思う。
「なんだお前、うんち行くのか」
果たして誰が言ったのか覚えていないが、覚えられない数だけそうしたシチュエーションはこの時期の男子にはつきものである。
「ふざけんなよ。ばーか、ばーか」
こんな会話は女子にはないのだろうと当時の私は思っていた。
小学生の頃から女子と会話をしたり一緒に遊んだほうが楽に思えた。同年代の女子は少しだけ大人びていて、ふいにからかってこられるのは苦手だったが嫌ではなかった。
それよりもすぐに「ばーか」とか「おなら」と言ってはしゃぐ男子連中はお腹を抱えて笑いあっても心の中では品のなさにうんざりしていた。
「先長いから、俺もトイレ行く」
私の一言で結局みんなトイレに行くことになった。
家族で出かける時、これと同じことが起きる。父がトイレに行きなさいと言っても弟も妹も大丈夫だとか行きたくないとか言い出す。私が「俺言ってこよう」と言うと僕も私もとトイレについてくる。
そういうところが変に周りに頼られるのは嫌いではなかったが、面倒だとは思っていた。それぞれの家庭環境が違うのだということは小学生の頃から認識はしていた。
認識という言葉はいささか重たい。そんな気がしていたというほうがしっくりくるかもしれない。
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