冒険の始まり

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冒険の始まり

 それは中学1年生の夏休み。僕らは友達7人とこどもの国に出かけた。  こどもの国といっても、子供だけが自治運営している国家というわけではない。神奈川県横浜市青葉区にある『こどもの国』である。  品川区の公立中学校に通っていた私にとっては、それなりの旅行気分で行く場所であり、まだ小学校を卒業して半年も経っていないような子供にとって、それはちょっとした探検というよりは冒険に近かったし、はしゃぐなと言うほうが無理であった。  東急大井町駅に集合した僕らはさっそく切符を子供料金で行くのか大人料金で行くのかという話になった。やるならどちらかに統一する必要がある。今にして思えば、絶対にバレないだろうとは思うが、まだ昭和の時代、自動改札は導入されていなかった。  つまり駅員が改札で駅員が切符を切るわけなのだが、そこから冒険は始まっている。物語で言えば、関所を超えるのに役人の目をごまかして通るようなシチュエーションになる。  当時初乗りは大人で80円か90円。券売機で「こども」のボタンを押して買えば切符に「小人」と赤で印刷され、金額は半額になる。  私は当時、集団の中においては良識あるリーダーと目されていた節があり、「やまっちがいいならいいよ」みたいな責任の丸投げをされることが少なくなかった。  そんなわけで、私を先頭に「小人」と刻印された切符を手に七人の「小人」は我が物顔、したり顔、いたずらっぽく、ひょうひょうと、すくすくと、或いは鼻歌交じりで改札を抜けていった。
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