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「本当にピンチの時だけ、開くんだぞ」
しわがれた浅黒い肌の老人は、俺に本を握らせると、両手をギュッと掴んで離さない。
この老人の言うところによると、この本は魔法の書で、絶体絶命のピンチの時に運命を切り開いてくれるらしい。
ただし、一度きりしか使えない。
一人旅をしていた異国の地で、たまたま通りかかった道に泣いている子供がいた。
周りを見ても親らしき人物は見当たらず、迷子かなと思った俺は、この子供を知っている人を探したのだった。
特に目的もなかったので、時間のあった俺は子供の手を引き、観光がてら村中を探し回った。
やっとのことで見つけた村外れの小屋に、この子のじいさんはいた。
孫を抱きしめ大いに喜んだ老人は、お礼にと魔法の書をくれるという。
その本は、優に千ページは超えるのではないかという分厚さで、見るからにボロボロで古臭い。
魔法の書なんて信じられない、と思いながらも真剣な表情の老人を見ると、その場を収めるために貰うことにした。
その時は荷物になるな、としか思っていなかった。
そして今、ピンチを迎え、この本を開いてみる。
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