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死ぬときに後悔のない人生も大事だけど、どうせ後悔するから割り切りも大事
人が亡くなった後は天国に行くか、地獄に行くのかの2パターンにまず分かれる。ここは閻魔様が判断する仕事だ。次に天国の中でも、より幸せな世界が広がっているところ、悪くはないけど良くもない所といった世界が存在する。天国の中にも階層があるのだ。どこの天国の世界に人間を配置するのかについて、振り分けをするのが天使の仕事だ。基本的には悪いことをしてなければ、閻魔様は天国行きを決める。天国行きを決めたあとの振り分け業務としては、誤って地獄行きレベルの人間が、天国に行こうとしていないのかと、一人ひとり、現世でどんな人生を歩んで来たのかの聞き取りを行っている。
この振り分けがとてもめんどくさい。特に死ぬ前に自分勝手な振る舞いをしていたような人ほど、嘘をついてくる印象がある。反対に常に人の為、世の為に尽くして来たような人ほど、謙虚な姿勢であり、崇高な人生を辿ってきたんだろうなと感じさせる品がある。
変な人が私の所に来ないことを今日も祈るばかりである。そんな事を考えていると、1人の男性が私の前にやってきた。見た目は50歳ぐらいで、ズボンは色落ちしている。Tシャツはとてもシワシワのものを着ていて、なんとなくだが、突然死したのだろうと予測する。
「すいません。僕はここに来るの初めてなのですが。受付の方も天使の格好をするとはなかなか、細かい所までこだわりがあるように感じる。」
「皆さん、最初はそうですよ。見た目はこれが普通ですよ。」
普通の人は天使の姿を見て、驚いた表情をまずは見せる。それは死後の世界なんて誰も分からないからだ。けどこの男はなぜか冷静だ。
「60分フリーコースで良いですか。オプションとかはいらないですけど、このひめかちゃんという人空いてますか?」
この男はいったい何を言っているんだ?ひめかちゃん?誰だ?
「すいません。ここは天国ですよ。何をおっしゃっているのですか?」
「私は天使と遊びに来ただけですよ。ここはそういうお店でしょ。」
男は何かとんでもない勘違いをしている。
「すいません、ここにくる前の状況を教えてください。」
「あっ予約とかしてるのかってこと?してないよ。ネットで探したらここの口コミが良かったから、天使をコンセプトに経営しているヘルスだって。」
なんとなく、事情が分かってきたぞ。現世に研修へ行ったことがあるが、繁華街にそういった大人のお店があることを思い出した。この男は、たまたま天使のコスプレをした人が接客?してくれるお店に行き、店に辿りついたぐらいで亡くなったということなのだろうか。なんと不憫な末路だ。
「すいません。ここは本当の天国です。あなた亡くなってますよ。」
「え?どういうこと??僕は死んだのか?」
「そういうことになります。」
「どうりでお姉さんさんの格好が、本気過ぎるだろと感じたわけだ。本物の天使っているんですね。この建物もどこか神聖な感じがしますし。いや、そんなことはどうでもいい。俺はもう現世に戻れないのか。」
「残念ながら戻れません。」
「嘘だろ。やり残したことばかりだぞ。」
「皆さん、後悔ばかりだと言ってますね。周りの目を気にせずにやりたいことをやれば良かったとかです。」
「いや、俺は目標とかなかったけど、もっといっぱい遊びたかったな。中々、人に胸を張って堂々と自慢できるようなことなんて、何も残してないけどね。取り敢えず、もっといろんなことを経験して、楽しみ尽くしたかったな。」
この男は取り敢えず、格上の天国に配置することはなさそうだ。
天使の仕事をしていて死んだ後に人生を後悔している人が多いと感じる。
現世はどうも生きにくい世界なのだろうか?
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