天使の卵

買う

【卵を育てるときの注意書き】

「①必ず体内で育ててください
②愛情が栄養なのでたっぷり愛を与えてください。そうしないと育ちません
③妊娠期間は個人差があって半年前後です
④互いの信頼関係が崩れると、別の何かが育って産まれてしまう可能性があるのでご注意ください、だって」

「何かちょっと怖そうだけど、『ふうふ』の特徴を受け継ぐらしいし、体内で育てるんだから愛着も全然違うよね」

「すみません。おすすめの卵は？」

長い白髪に白髭の神様っぽい外見の店主に聞いてみる。

「天使の卵だよ。中々手に入らない。他のより値段は高いけどね。何しろ天使だから」

「天使？　すげえ！　俺、天使のがいい」
「ああ……うん」

アキが少し眉をしかめ、ノらない顔つきをする。
他の卵と比べて値段が一桁違う。
諦め混じりの溜め息が出る。

「それ、買います。危険はないんですよね？」

同じとこに視線を落としていたアキがいきなり顔をあげた。

「え？　買うの？」

アキは俺と違って衝動買いしない堅実派なのに。