3人が本棚に入れています
本棚に追加
いつものようにお弁当を持って裏庭に出る。なごみがベンチで座って待っていた。周りにいた人たちは、お喋りをやめ、何故か足早に去っていった。
私はなごみに近づく。
「なごみ」
「ああ、カノ……」
私はなごみのとなりにすわる。何か様子がへんだな。
「ねえ、なごみ。何かあったの?」
なごみは私の言葉にはあっとため息をつく。え、何かおかしなこと言ったかな?
「何かあったの、はこっちのセリフ。あんた最近どうしたのよ」
「え、どうしたって、何が?」
「身長が急に縮んだから皆びっくりしてるわよ」
なごみの言葉に、もしかしてさっきの人たちが急に去っていったのは、そのせいなのかな、と思った。
「急に痩せたとかでも心配するけど、急に身長が縮むなんておかしいわよ。何があったの?」
「えーっと……」
まさか身長のせいで別れることになったなんて、はずかしくて言えない。けど、なごみには話してもいいかな。
「あのね、実は……」
私はなごみに話した。
なごみなら、分かってくれると思った。
私の話が終わると、なごみは口をゆっくり開く。
「一つ、聞きたいんだけど」
「うん、なあに?」
「その水やりって、今もやってるの?」
「え、うん。花の成長の分、身長が低くなるって書いてあったから」
「……。ちなみに、今どれくらい縮んでるの? 10cmくらいは縮んでるように見えるけど……」
「12cmくらいかな。佐藤の身長より低くなれたよ。これで佐藤もまた振り向いてくれるかなあ?」
そう言うとなごみは顔つきがとてもこわくなった。
「それどころじゃないってば! 縮みすぎよ! 水やりなんて今すぐやめなさい!」
「え、でも、身長低くしたいし、それに花もまだ咲いてないし……」
「花?」
「うん、花が咲くまでは身長ちぢめられるんだって!」
私の言葉に、なごみは呆気にとられたような顔をした。
最初のコメントを投稿しよう!