恋に躊躇する瞬間

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玲さんの部屋に戻って来たと思ったら、またさっきと同じようにベッドまで連行された。 だけど、さっき来た時の甘くふわふわとした心のなかとは全く別。 じたじたと暴れるわたしを抑えつけ、耳元で囁かれる上辺だけの言葉。 「───好きだよ、愛してる」 思わず、反論した。 「あの、囁く相手、間違えていませんか?」 眉を寄せ、じっと睨むような眼差しでわたしを見つめてくる。 構わず、続けた。 「……だってあなたが好きなのは、わたしじゃないでしょ?」 自分で言ってまた涙が溢れる。 その涙に濡れた頬を両手で包まれ、キスをされた。 そんなふうに絆されたくなくて、またじたじたと逃れようとするけれど、優しく包んでいるはずのその手はびくともしなくて。 逃がさないよと言わんばかりに舌を絡められ、容易く身体の力を抜かれてしまう。 「……っ、ふ、」 唇の隙間から吐息が漏れる。 それさえも呑み込むように唇を覆われて、情熱的なその口付けに切なさを募らせていった。 もう抗う力がないことが伝わったのか、ようやく熱を孕んだ唇が離れる。 「璃珠、」 頬は手で包まれたまま、名を呼ばれるけれど視線を合わすことができない。 「不安な思いをさせてごめん。 電話の相手、弟。 週末こっち来てるから、明日璃珠に会いたいって。……ありすも一緒に。 それで話が長引いてた」
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