恋に落ちられる瞬間

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「郁さんごちそうさま。じゃあ私はこれで。 璃珠、またね」 「えっ?」 もうあれ全部飲んだの? 「えーー、瀬那さぁぁん!」 「ほんと酒匂くんうるさい」 ね?とわたしに笑いかけてくれた瀬那さんのその表情に、きゅんとしてしまった。 亜希が惚れるのもわかるよ。 全く相手にならないこともね。 瀬那さんが店を出て行くのを見送り、亜希に言い放った。 「亜希、時間の無駄だよ。 若くて人気のあるうちに、早く他あたりな」 「それどっかで聞いたことあるセリフだな」 郁さん苦笑い。 「それじゃわたしも帰るー 郁さん、美味しかったです。亜希、ごちそうさま」 「ええっ!?オイ相談は?」 「だからさっき言った、それが答え」 「うわマジかーー!」 あーーもう、うるさい。 ◇ わたしが禅を出たあとの、わたしの知らない兄弟の会話。 「璃珠ちゃんすっげえ可愛いんだからそっち狙えよ、って兄としては言ってやりたいけど、兄以外の俺の全人間性がそれを反対してる」 「は、ひどくね? 璃珠、同期内でも狙ってんの多いから今更参戦したら他のヤツにしばかれるわ。 つーか俺は瀬那さん一択だっつーの」
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