394人が本棚に入れています
本棚に追加
「そうだよ、ありすのこと引き摺ってずっと童貞だった。けどそれ打ち破ったの、璃珠なんだよ」
自虐的な笑いが込み上げる。
そんなわけ、ない。
だって瀬那さんみたいにあんな綺麗で性格も良いひと、わたしがかなうわけない。
「玲、璃珠に気持ち伝えなかったの?」
「好きだ、とは言われましたけど」
それはベッドの上限定の話だと聞き流した。
「長年のありすへの想いが吹っ飛ぶくらい、璃珠にはまったってことじゃないの?
それってかなり凄いことだと思うけど」
「そう、なんですか?」
じゃあわたし、舞い上がっていいの?
見初められたって、はしゃいでいいの?
「……わたし、一夜限りだと思って、寝てる藍原さん置いて出て来ちゃったんです」
「えーー!? それきっと今頃、すごく落ち込んでると思うな」
志水さんが楽しげに笑う。
「ともかくさ、一度ちゃんと玲と話してごらん?誠実なヤツだから、軽い気持ちで璃珠に手は出していないはずだよ」
「ほんと、ですか?」
「だからそれを本人に聞いてごらんって」
そんなの、聞く勇気ない。
ごめんね?って、あの笑顔で申し訳なさそうに謝られたら、二度と立ち直れない。
だって、今までなかっただけで、これがワンナイトのスタートじゃないと言い切れる?
「……とりあえず今は仕事、します」
わたしはパソコンに向き直って、今日の仕事に集中することにした。
「玲は今頃仕事どころじゃないかもねー」
志水さんの言葉に、期待を持たないよう自分に言い聞かせて。
最初のコメントを投稿しよう!