恋を始める瞬間

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「……この香り、わたし好きです」 「香り?」 「どこの香水ですか?わたしも同じの、つけたいです」 玲さんが嬉しそうに肩をすくめる。 「同じの、つけてくれるの?」 「いいんですか?」 「いいに決まってる。だけど……」 「?」 「俺のことは? 香りは好き、って言ってくれたけど、俺のことは好きって言ってもらってない」 言われて、そういえばと気付く。 ちら、と玲さんの顔を見上げた。 首を傾げ目を細め、わたしの言葉を待っている。 それも、ハードル高いぃ……!! 一度視線を外し、またちら、と見て、ああやっぱりダメだと、視線をまた外す。 「璃珠、昼休み終わっちゃうよ?」 楽しそうにクスクス笑われるけれど、そんな、だって、心の準備が……! 「そういうとこも可愛いな。好きだよ、璃珠」 「玲、さんっ...!」 そして、唇を軽く重ねられる。 「今週金曜日、また璃珠のことお持ち帰りしていい?」 「っ、、」 返事に詰まっていると、ん?と念押しで顔を覗きこんでくる。 慌ててこくん、と頷くと、「よかった」とホッとした表情。 「その時聞かせて?楽しみにしてる」 またチュ、とキスをされた。 「先行くな。璃珠も慣れるまで仕事大変だと思うけど、がんばって。何かあれば相談にのるから」 そんな上司っぽいことを言い残して、玲さんは颯爽と会議室を出て行った。
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