恋を始める瞬間

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昼休み終わりギリギリでデスクに戻った。 小走りで戻ってきたわたしの顔をみて、志水さんが「お?」、ニタリと笑う。 「ふふ、」と笑い返し、パソコンに向かった。 「玲、気が気じゃなくてお昼だけ会社に戻ってきたらしいよー」 同じく自分のパソコンに向かいながら、志水さんが声で教えてくれた。 やばい。顔が緩んでしまう。 そして職権乱用ではあるけれど、今週の玲さんのスケジュールをチェックした。 玲さんは常務という立場で、ミーティングや会合がとにかく多い。 その中にはいわゆる接待と呼ばれるものもあり、それは会食だったりお酒の席だったりゴルフだったり。 「玲が来てからはそういう面倒なの、アイツが全部引き受けてくれてるんだよね」 今までは部長さんや課長さんが残業や休日出勤していた案件を、玲さんと波瑠さんで対応してくれているらしい。 「しかも契約の話とかちゃんと取ってきて、それは営業に連携して花を持たせたりしてね」 そうなんだ。それってなかなか出来ることじゃないよね。 「御曹司という立場に甘えず、人一倍仕事をこなしているんだよね」 「───志水さん、玲さんのアピールしてこなくても大丈夫です」 そんなことしなくてももうとっくに好き、だし。 「あはは、バレた?でも全部本当のことだから、一応」 あ、あと、と付け加えられる。 「うちの会社、べつに社内恋愛禁止じゃないから。なんにも遠慮することないからね」 大丈夫。それもチェック済みです。
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