恋を始める瞬間

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午後はテレマーケティング部のお客様対応資料作成の手伝いで、ずっと端末作業だった。 仕事の幅があり過ぎて、正直うへえってなってる。 でも頑張る。 だって玲さんに相応しい女になるんだもん。 そこに、社内メッセージの通知を知らせるアイコンマークが画面右下で点滅した。 誰かと思いクリックしてみれば、亜希から。 『金曜夜の案件、要報告。 業後、速やかに1階エレベーターロビー』 一応仕事っぽく送って来てるけど、御曹司とのことを根掘り葉掘り聞くから夜空けとけよ、そこで待っとけや、って意味。 『その件について報告義務はありません』 秒で返信される。 『御曹司セクハラ疑惑浮上』 はあ? と思ってるうちに、続けて受信。 『緊急度1、要説明案件。 リマインド〉業後、速やかに一階エレベーターロビー』 それは……たしかに、噂を訂正する必要がある。 『了解』とひとこと送り返し、業務を続けた。 ◇ 「遅っせえよ璃珠ーー」 定時から15分しか過ぎていないのに、その言いよう。 「週明けたのに、アンタんとこまだそんな暇なの?」 「うち、ユルイのよー しかも今月は御曹司が大口決めてくれちゃったから、目標達成してんの」 へらっと笑いながらも″御曹司″のワードでわたしの様子を窺われている気がする。 「とりあえずどっか店行こ、」 歩き出した亜希についていった。
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