恋を始める瞬間

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軽く、乾杯、とグラスを合わせる。 「で、どうしたあのあと。一夜のお相手に選ばれたんだろ?断れずにヤッてきたのか?」 なんていう聞きかただろうね。 違うひとが同じこと言ったら確実にセクハラなんだろうけど、亜希だと嫌味なく爽やかに感じる。得な性分だなあと思う。 「無理矢理じゃない。ちゃんと合意の上。 しかも一夜じゃない。次も誘われてる」 薄めにしてもらったウーロンハイはかなり飲みやすい。 「ばっかだな、それが騙されてるんだっつーの」 「え!?」 なんでそれだけで、そんなことがわかるの? 「合意の上って、連れて行かれるまでは合意じゃなかったろ? 口説かれて落とされたんだろ? あの顔と色気だもんな。 営業課の誰より口達者で契約取ってくるし、お前相当褒めちぎられて舞いあがっちゃったんじゃねえの?」 「うっ、、」 それは、否定できない。 玲さんが言ってた通り「かわいい」を100回は言われて、そのたび舞い上がってたのは事実。 「次もあるから遊びじゃない、ホンキだって? そんなの、俺だってセフレみてえな女の一人や二人いるわ」 「うっそ、亜希最低!!」 「っおい、今はオマエの話」 誤魔化すように、亜希がグラスを煽るようにビールを飲む。 亜希を睨みつけながらわたしもウーロンハイをごくごく、と飲み進めた。
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