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「次なんか奢ってくれればいーから」
亜希がさっさと会計をすませ、タクシーを呼んでくれた。
「家着いたら連絡入れろ、じゃあな」
べつにバスで帰っても大丈夫なのに……と思いながら、タクシーがアパートの前に泊まった時には頭もクラクラとしてきて、やっぱりタクシーにしてもらって正解だったと感謝する。
フラフラとタクシーを降り、階段を登ろうとしたところ。
「璃珠」
近くで名前を呼ばれた。
その声を聞いて、一気に目頭が熱くなった。
「玲、さん」
なんでここにいるの?
金曜日の約束だったのに。
「早めに仕事が終わって、顔見たくなったから。
そういえば連絡先も交換していなかったなと思って。待ち伏せなんてしてごめん。
── て璃珠、酔ってる?」
目の前が、回り出した。
くるくる、くるくる、───グルグル。
「えっ、璃珠!?」
玲さんの香りがふわっとして。
安心したわたしはそのまま意識を手放した。
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