恋を始める瞬間

14/18
前へ
/89ページ
次へ
「次なんか奢ってくれればいーから」 亜希がさっさと会計をすませ、タクシーを呼んでくれた。 「家着いたら連絡入れろ、じゃあな」 べつにバスで帰っても大丈夫なのに……と思いながら、タクシーがアパートの前に泊まった時には頭もクラクラとしてきて、やっぱりタクシーにしてもらって正解だったと感謝する。 フラフラとタクシーを降り、階段を登ろうとしたところ。 「璃珠」 近くで名前を呼ばれた。 その声を聞いて、一気に目頭が熱くなった。 「玲、さん」 なんでここにいるの? 金曜日の約束だったのに。 「早めに仕事が終わって、顔見たくなったから。 そういえば連絡先も交換していなかったなと思って。待ち伏せなんてしてごめん。 ── て璃珠、酔ってる?」 目の前が、回り出した。 くるくる、くるくる、───グルグル。 「えっ、璃珠!?」 玲さんの香りがふわっとして。 安心したわたしはそのまま意識を手放した。
/89ページ

最初のコメントを投稿しよう!

123人が本棚に入れています
本棚に追加