恋に落ちられる瞬間

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その後の相槌や、最後の「研修お疲れ様でした」などの労いの言葉。 どれを取ってもスマートな対応で、秘書やるような男性ってやっぱり素敵だよなあと惚れ惚れしながら電話を切った。 「────ちょっと七瀬さん?」 「はい?」 信じられない、といった面持ちの先輩。 ただでさえ濃いアイメイクが、目を見開いて爛々としている。コワ。 「今の、″アイハラ″って……」 「ああ、男性秘書の方ですかね。 志水さん席外してたので、言伝お願いしちゃいました」 井浦さんにも何回かやっていることだから、問題ないだろう。 「それ、御曹司。 うちの会社名、まさか知らないわけじゃないわよね? ″藍原商事″。」 「え……!?高倉さんと同じタカクラじゃないんですか?」 「御曹司は跡継ぎだから、わかりやすく藍原の性を名乗ってんの。秘書課どころか、東京本社に他にアイハラなんて人いない。 まさか、御曹司に言伝お願いしたの?」 「うっ……でも、まさか御曹司自ら内線に出るなんて思わないじゃないですか!」 「まあ、それもそうねえ。 事情が何かあったのかも知れないけれど、明日ちゃんと志水さんに謝っておきなさいね?」 「はいぃ、、」 あーー、やっちゃった。 けれど次の日志水さんに謝ったら、電話口でガハハと笑われ「璃珠のせいじゃないから!」と言ってくれた。 志水さん、まだ電話でしか話した事ないけど、すごく気さくだしこの人が教育係でほんと良かった。 ゴールデンウィーク明けの正式配属も、緊張するけどこの人の下でならやっていけそう。
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