恋に落ちられる瞬間

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◇ ゴールデンウィーク明け、東京本社初出勤。 大阪で既に受け取っていたIDカードで本社ビルのセキュリティゲートを抜け、8階にある秘書室へエレベーターで向かう。 研修中には同期がいたけれど、本社秘書室に配属される新人は、今年はわたし一人だけ。 「はぁ、緊張するぅ……」 秘書室入口ドア前で小さく深呼吸をし、ここもIDカードで入室した。 入室するなり、「あっ璃珠(りず)!!」 わたしの名前を呼んだその女性、ショートカットのすらっとした美人。 「志水さん、ですか?」 ニコッと笑ってこちらに近付いて来てくれるその姿に、緊張が解けていく。 電話通りの気さくなひと。 うぅ、やっぱり志水さん大好き! 「会うのは初めましてだね。 これから、どうぞよろしくね」 「はい、よろしくお願いします!」 そしてデスクへ案内される。 「やー期待以上。これは玲が喜ぶわ」 志水さんがボソッと呟いた言葉がよく聞こえなかった。 「何か仰いましたか?」 「んーん、なんでも!あ、荷物ここ置いてもらって……」 その日は他の秘書の方や関連部署の方々にご挨拶、本社ビル内を案内してもらい、デスクで簡単なオリエンテーション。 定時で上がらせてもらい、ビルを出る頃にはもうぐったりだった。 今日が木曜で良かった……明日来ればまた土日で休める。 あ、でも明日の夜は今年度の新人歓迎会だったな。 わたしがこっち来たタイミングでまとめてやるって言ってたっけ。
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