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「……ロベル?」
神殿には、何故かロベルがいた。
彼は宰相の息子であり私とはきょうだいのように育った。
「どうしたの?こんな夜中に」
「どうしたの?ではない!お前が本を入れ替えた事など分かりきっている!」
かなり口煩く、正直昔から苦手なのだがロベル自身は眉目秀麗、文武両道。国王である父の信頼も厚い。
「ああ、やっぱりロベルにはバレてたか」
「当たり前だ。僕の目を欺くなんて百年早い」
「だよね。でももう会う事もないだろうし」
「それについてだが、僕も一緒に行く」
「は?」
一緒に行く?
「外は危険な事で溢れている。お前なんか数時間で天国行きだ」
「いや!いやいやいやいや、未来の宰相が何言ってるの?優秀なんだから王国の為に働きなさいよ」
というか絶対に嫌なんだが。
「エリザに拒否権はない。行くぞ」
「え!?は、はい!?」
ロベルはスタスタと歩き出す。
私は急いで本を入れ替えて彼を追いかけようとするが……。
不意に、不意に本物の本のページを開いた。
「げぇっ、」
しかし、浮かび上がった名前を見て思わず顔が引きつる。
「エリザ!さっさとしろ!船に間に合わなくなる!」
「船って何!?そもそもなんで今日私が出て行く事を知ってるのよ!?」
誰にも言ってなかったのに。
「……ふん」
ロベルは意地が悪そうに笑って。
「先程も言ったが、僕を欺くなんて百年早い」
「なっ」
颯爽と歩くロベルの後ろ姿を見て、私は呆然と立ち尽くす。本よ、どうかこの運命除外してくれないでしょうか……。
【完】
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