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事件はやはりスパイのしわざか?
ここは国会議事堂の一室です。
小泉官房長官、エリートモードが全身に漂う及川内閣秘書官、そして軍事研究家の倉橋が、大きな机を囲み、今まさに重大会議の最中です。机の上には、日本地図が広げられていました。
「では、倉橋さんも、今回の事件は、間違いなくスパイのしわざだと?」
「某国が日本侵攻を図る場合、まず青森を攻撃し占拠するでしょう。非常に軍事的に重要な地点ですので、多くの国のスパイが集結しています。警察と提携を進めているエブリスタ研究所のAIは是非とも手に入れたいでしょうね。日本侵攻の足がかりのためにも必要です」
「しかし……」
小泉官房長官が首をひねります。
「日本侵攻の場合、第一目標は青森となるのですか? 北海道ではないのですか?」
「私は以前、台湾やトルコ、モンゴル、ベトナムの軍関係者と意見交換したことがありますが、現在公開されている青森の防衛システムが全てというなら、短時間で制圧は可能という意見が複数から出されていました。北海道の防衛については以前より、政府も力を入れており、容易ではないでしょう。これは以前にアメリカの軍事研究所が、そう発表した事実もあります」
「ではやはり、青森の事件は、日本侵攻を念頭に置いたスパイの犯行ということですね」
及川秘書官が勢い込んで尋ねてきます。
「もうひとつ。北海道は陸の孤島です。日本全土に侵攻を拡大するには圧倒的に不利といえるでしょう。青森はどうか? こちらを拠点にすれば、海路、空路で短時間のうちに、北海道を制圧できる。別動隊は陸路で東京、名古屋、大阪と本州の三大拠点を一気に制圧。さらに空路で九州に向かう。これがもっとも効率のいい日本侵攻計画です。青森が日本侵攻のため重要な拠点である以上、今回の事件は、スパイが関係している可能性が非常に高いと、私は考えています」
及川内閣秘書官が大きくうなずきました。
「全く、その通りだ。私も最初からそう考えていたのだ。八甲田山一帯にスパイのアジトがあるという論文を『will be』という雑誌で読んだことがある。日本を守るために、一刻も早く事件を解決する必要がある。官房長官、直ちに私を青森に派遣して頂きたい」
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