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「それからムラカミ、オオエのふたりは、日本の有名な作家で平和運動にも共感しており、平和を語るうえで……」
テーブルがものすごい音を立てました。彩良の鉄拳のしわざでした。
「もういいから!」
彩良は、犯人を見るような目で、日下くんをにらみつけました。まさしく夜叉の君臨です。
「つまり君は、私が高校の『倫理』も『現代文』も分からない超IQが低い人間で、君は優等生だと、遠回しに言いたかったワケね」
「違います。僕、彩良姉さんに喜んでもらおうと思って……」
彩良は思いっきり、日下くんに平手打ちを浴びせ、
「誰も喜ばない。君のような人間ね。思いっきり嫌われるよ。私にもね」
と言い残し、バタンと玄関のドアを閉めました。
「行ってらっしゃい」
日下くんが申し訳なさそうに頭を下げ、ドアの外に向かって声をかけましたが、何も返事はありませんでした。日下くんの目からポロリと涙がこぼれました。
「本当なんです。教えてくれてありがとうって、喜んでもらいたかったんです……」
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