きみとずっと

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 土曜日、待ち合わせ場所で待っていると時間どおりに水沢が来た。仲村を見てわずかに目もとを和らげる。 「悪い。待ったか?」 「ううん。大丈夫」  自分もついたばかりだ。  待ち合わせた駅はあまり大きくないところで、改札あたり、という待ち合わせでも問題なく会えた。駅は小さいけれど、調べたところ大きい公園が近くにある。 「寒いね」  暖冬とは言うけれど、風はしっかり冷たい。晴れていてもやはり冬の寒さだ。  仲村がモッズコートのフードで首筋を隠すように少し肩を竦めると、水沢が申し訳なさそうな視線を向けてきた。 「どうしたの?」 「公園なんて寒いよな。やめておくか」  水沢が足を止めるので、仲村も立ち止まって振り返る。 「でも、俺は水沢が行きたいって言ってくれた場所に行きたい」 「……!」 「だめかな?」  もしそれでも首を横に振るようだったら、違う場所に変更してもいい。だけどできたら水沢が楽しいところに行きたい。 「……ほんと、仲村って謎」 「どういう意味?」 「そのまま」  水沢がまた公園のほうに向かって歩き出すので、仲村もついていく。謎とはどういう意味だろう、と考えるがわからない。歩きながら水沢に聞いてみたけれど、答えてくれなかった。 「わ、大きいね」  公園につき、葉の落ちた木々の下をふたりで歩く。陽射しが降り注ぐ中、水沢が目を細めて空を見あげた。 「自然の中にいると、落ちつくんだ」 「うん」  なんとなくわかる気がする。自然の中にいると気持ちがリラックスするというか、気を張らなくていいような、そんな心地よさがある。 「やっぱりちょっと寒いな。仲村に風邪ひかせるわけにはいかないから、他のところに行こう」  水沢が踵を返すので、慌ててその腕を掴む。 「でも、水沢はここがいいんでしょ?」 「あ、ああ」 「じゃあ、俺もここがいい」  少し先にベンチを見つけて、そこに座って手招きすると、水沢は困ったような顔をしながら隣に座ってくれた。先ほどから仲村のことを気にしてくれているので、水沢は気遣いの人なのかな、と感じた。  隣を見ると、水沢はまだ難しい顔をしている。 「寒くてもいいじゃん」  仲村が笑いかけると、水沢がわずかに頬を赤くした。自分は寒くてもいいけれど、もしかしたら水沢が寒さがつらいのかもしれない。 「水沢、寒い? ごめん、もしかして水沢が寒いの嫌だった?」 「違う」  そっけない答えが返ってきて、少し落ち込む。また気を遣ってくれているのかもしれない。しゅんと肩を落とすと、水沢がまた「違う」と慌てたように否定した。 「本当に、違う」 「そうなの?」 「ああ。寒いくらいがちょうどいい」  寒いのが好きなのだろうか。どういう意味かわからず首をかしげていると、水沢は少しふてくされたような表情して手の甲で自身の頬をこすった。 「……わからなければいい」  本当になんだろう。水沢の顔を覗き込むと、さらに頬を赤らめた。 「やっぱ寒いんじゃない?」 「違うって」 「そう」  違うと言うならば違うのだろう。これ以上いろいろ言うと鬱陶しがられるかもしれない。  水沢から視線を空に向け、深呼吸をする。仲村の目には、青い空と葉のない木々は少し寂しげに移った。冷えた空気がそう感じさせるのかもしれない。 「仲村」 「なに?」 「ありがとう」 「……? どういたしまして?」  なにに対してのお礼かわからないけれど、隣を見れば穏やかに空を見あげる横顔があり、仲村の心を優しくくすぐった。
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